新潟地方裁判所三条支部 昭和40年(ヨ)81号 判決
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〔主文〕一 債権者は本件仮処分の保証として金一〇万円を供託しなければならない。
二 債権者が右供託をなしたときは
(1) 債務者は別紙第二目録に記載するような建築用ハッカーを製造販売してはならない。
(2) 債務者の前記物件の既製品及び半製品に対する占有を解き債権者の申立による執行官にその保管を命ずる。
三 訴訟費用は債務者の負担とする。
〔判決理由〕第二、債務者は本件実用新案登録は実用新案法第三条に違反し無効であると主張しその事由を述べているが、その判断は特許庁の審決乃至はこれに対する行政訴訟においてなされるべきことで、当裁判所にその裁判権のないことはいうまでもない。
又、債務者は、特許庁に対し本件実用新案登録の無効審判を請求しているとして、本件仮処分の却下又は手続の中止を求めている。しかし、民事訴訟法上の保全処分たる本件仮処分申請に対し、当裁判所はその被保全権利の存否と仮処分の必要性を審理した上申請の当否を判断すべきものとし、この判決に及んだのである。
第三 技術的範囲の争について
債権者は、債務者が製造販売している別紙第二目録のハッカーは本件実用新案権の技術的範囲に属し権利侵害であると主張し、債務者は右技術的範囲を異にする旨反論するので、以下この点につき判断する。
一 先ず、本件実用新案権の考案即ち自然法則を利用した技術的思想の創作の要旨が何であるかを検討するに、(本件実用新案公報)の記載を基礎とし、<証拠>を総合すると、右考案の要旨は、債権者の主張するように「螺旋筒の末端にキャップを被嵌する」という点に帰するものと認められるのである。更にその理由を説明するに、右実用新案公報の「考案の詳細な説明」の欄に「在来のものは単にハッカー杆を螺旋筒内に廻動自在に設けてその末端の鍔頭により離脱を防止しているに過ぎない。」「仍つてこれを使用する場合手袋を使用して握持するものであるからハッカー杆を使用上ぐるぐる廻動せしめると鍔頭と螺旋筒との間に手袋がはさまつたり或は螺旋筒の末端部にひつかかつたりした。」「本考案はかかる欠点を解決せんとするもので………。」「螺旋筒3の末端に更にキャップ5を被嵌した上これを螺旋筒3に溶着したから螺旋筒3を握持してハッカー杆2をぐるぐると廻動せしめてもキャップ5が被嵌されている以上鍔頭4に直接触れないから作業中に手袋体が螺旋筒3と鍔頭4との間にはさまつたり或は螺旋筒3の末端で手を痛めたりする事がなく安心して作業が出来る等秀れた実用上の効果を有するものである。」と記載されているところより考察すると、右キャップを被嵌するという点にその記載のような作用効果があることが明らかである。そして、その考案の目的は専ら右の作用効果の点にあり、これ以外のものではないと認められるのである。
二 本件実用新案のハッカーはキャップが金属で溶着するものであるところ、本件仮処分の目的物たる別紙第二目録のハッカーのキャップは合成樹脂製で被嵌固着(但し取はずし可能)するものである点が相異してはいるが、この相異は前段判示するところにより本件実用新案の考案の要旨には属しないものと認めなければならない。
三 従つて、債務者が製造販売している別紙第二目録に記載するようなハッカーは本件実用新案権の技術的範囲に属するものと認められるから、その製造販売は右権利の侵害となるものである。
<中略>
第五 結論
以上の理由により、債権者に金一〇万円の保証を供託させることを条件として、主文第二項(1)、(2)のとおり仮処分をなすべきものと……する。(荒井重与)